『 わが魂 わが涙は 』Mon Soupir, Mes Larmes (抜粋)








教会の扉を開くときの胸の高鳴りと静けさ、
全ての人に開かれたその扉の重み‥
旅する先々で教会を訪ね歩き、その感触を手に残しました。
そして、正面の祭壇に数歩近づき、振り返ると聳え立っている
パイプオルガンー
音が「降り注ぐ」瞬間を知った時の震えを、
忘れることができません。

霊南坂教会のオルガンの音に生命を吹き込む32本のストップ(音栓)、
それは全て閉じられた状態で始まり、ひとつずつ開かれていき、
最後には全てのストップが開かれます。
そして、4人の歌い手を32段の階段の頂上へと導いていきます。

歌はそれぞれ異なった言語の、異なった詩をテキストとしながら、
それぞれの光源を求めつづけます。

次第に音が言語を越えて共鳴しあい、オルガンの導きのもと
交点ー光点でひとつに重なりあうー
それが、今の私の祈りを音に託した、ひとつの形でした。

それは永い永い旅の始まりであり、
32段の階段の頂上で見つけたものは、
鍵穴を知らぬ1本の鍵でした。

(2004.10.19.)